ファーストラン体験のUXデザイン事例「Summly」

AQでは、ユーザが初めてプロダクトに接した時の体験のことをファーストランと呼び、そのUXデザインは主要機能と同じくらい重要なものだと捉えています。本シリーズでは、気になったファーストラン体験を解説・評価します。

Summly」は、独自のテクノロジーはもちろん、ファウンダーの若さと多くの有名な投資者が付いていることで話題になったニュースの要約アプリです。ニュース記事から重要な部分を抽出して400字の要約が生成されているので、ユーザは任意のキーワードに紐づいた要約から気になる記事を選んで読む、という仕組みになっています。

Summlyのファーストランでは、動画とヒントを使った「チュートリアル型」のアプローチを用いています。前回取り上げた「Squarespace Note」と同じアプローチですが、Summlyの場合、まずはじめに動画、そしてアプリ利用画面内でオーバーレイ表示によるヒント、といった複合的な方法を取っています。

まずは、インパクトのある動画を通じてアプリの印象付けを行っています。このキャッチーな動画は、利用方法の紹介よりも、他のニュース購読アプリとの差別化を計っていると思われます。スタイルとしては、90年代のウェブサイトで良く使われた、Flashのイントロを思い出させますね。

見た目は良いかもしれませんが、強制閲覧であるにも関わらず、情報としては何も得られないという難点が見受けられます。Summlyの事例が発端となって、このようなファーストランがトレンドにならないと良いなぁ、なんて思ったりします。

どんなに斬新なデザインでも、ユーザにコンテンツを届けるのが一番の目的のはず。この動画からは、そのようなコンテンツ中心の思考より、デザイナーの好き勝手な遊戯が感じとれると言えます。

キャッチーなSummlyのイントロ動画/起動後のヒント


動画の後は、アプリの各画面にオーバーレイとしてヒントが表示され、操作のチュートリアルが提供されます。公式サポートページでジェスチャーを一覧で見ることができますが、UI要素がほとんどなくて、独自のインタラクションが結構たくさんあることが見受けられます。

オーバーレイでは、シンプルなアイコンと分かりやすい説明文が投入されています。ユーザにもう少し丁寧に操作を教えるとしたら、例えばスワイプのアイコンに、動かせるべき方向を表現するアニメーションを付けるなどの工夫があると、複数のジェスチャーをすんなりと覚えるのに役立つのではないかと思います。

小さな工夫ではありますが、こういった綿密な配慮が積み重なってユーザを虜にするアプリが出来るのだと考えます。

ファーストラン体験の評価:★★★☆☆

ファーストラン設計のアプローチを解説した記事も併せてお読みください。