【イベント】レポート:美術館を再考する

ユーザ参加型の時代に、美術館はどのようなエクスペリエンスの実現に向かうべきか?

先週、美術館のさらなる発展を模索すべく、この問いを始めとした様々な問題が、AQのイベントにて話し合われました。私たちのオフィスに友人なども集めて行われたこの気軽なイベントは、ゲストの招待、プレゼンの準備、美味しい料理の注文、テーブルや椅子のセッティングなど、少しの手間と準備を経て始まりました。

AQと東京アートビートは、東京アートビートの新iPhoneアプリ「ミューぽん」の始動に向け、ここ数ヶ月のあいだ密に連携してきました。そして、Appストアからの認可が降りるまでの期間を、ミーティングほどシリアスでなく、ランチライムのお喋りよりは真剣な意見交換をしよう、とイベントを企画しました。偶然にも、正に本イベント当日にミューぽんが認可されリリースされることに!そこで私たちは、まず上等のシャンパンで乾杯して夜をスタートさせました。

この日のゲストは、ミュージアム・リサーチャーの平野智紀さん。平野さんは自身のブログでミュージアム研究について書かれています。研究テーマである「来館者研究:来館者はどのようにミュージアムを体験するか」を紹介してから、「ミュージアムでやってはいけない8つのこと」を伝授して下さいました。平野さんの最近の興味は「対話型鑑賞」で、これについては植田正治さんの写真を使ってデモをしてくれました。

平野さんのプレゼンテーションに次いで、以下のようなディスカッションが行われました:

  • アクティビティをベースにしたミュージアムは、ただ壁に掛けられた作品や説明を見せるだけのミュージアムよりも有望なようだ。しかし、対話を通した芸術鑑賞がミュージアム側のファシリテーターを要するならば、結局それは、形は違えどミュージアムによってコントロールされた体験(キュレーション)に過ぎないのでは?
  • どうしたら、芸術鑑賞はよりオーガニックな、そしてダイナミックな、且つ各機関を越えた体験になり得るか?
  • 東京アートビートのような外部組織は、どのような役割を担えるか?


本イベントでフード・コーディネーターに任じられたEikoは、「寿司 – 千年の歴史」という壮大なテーマの下、夕食を準備してくれました。数日前から、全国各地から様々なお寿司がクーラー便でオフィスに配達されてきていたので、興味津々でした。その起源を奈良時代に遡る発酵食品の「鮒寿司」から、江戸時代に生まれ、私たちも馴染みの深い「押し寿司」に至るまで、4種のお寿司を食しました。初めてお寿司にお酢が使われたのは、この押し寿司だそうです。

次に、数ヶ月前から東京アートビートでインターンをしている曽田智佳子さんが、ミューぽんを紹介してくれました。彼女はまた、ミュージアム・キャリア・ディベロプメント・ネットワークのイベントに参加した経験を元に、「ミュージアムとIT」に関する識見をシェアしてくれました。

私たちは、ミューぽんを提案した際に受けた、各美術館のそれぞれ違ったリアクションについて議論をし、またミュージアムとより意義のある対話をしていく上でのきっかけ作りとしてのミューぽんについてアイディアを交換しました。

最後に、PaulとTomomiが、Nina Simonの素晴らしい著作「Participatory Museums (参加型ミュージアム)」から一部を紹介。彼女のブログに感銘を受け続けている私たちは、彼女の考えがウェブ・サービス開発と深く関わりを持っていると考えています。特に、AQの活動はモバイル・デバイスやオフライン環境とのインタラクションへと広がってきているので、応用例として非常に面白いのです。

また、オンライン・ブランドが持つ影響力は、それらブランドの公式ウェブサイトの範疇を越える存在となってきたのと同様に、美術館はもはや単に人が集まる物理的な行き先(destination)ではないという点についてディスカッションしました。オンライン・ブランドを美術館に例えるとすると、増々普遍的になってきたFacebookの「好き」ボタンに相当するものとは何なのだろうか?また、美術館はそういった対話のどちら側に屬するのか?美術館とは、コンテンツの集合体なのか、それとも文化を取り巻く社会的対話を実現するための場なのだろうか・・?

あれやこれやありましたが、私たちが日々身近に、そして大切に感じているトピックに向き合えた、有意義な夜となりました。こういった、カジュアルで力の抜けたイベントは、日々の仕事に追われ、つい後回しにされがちになっているそれぞれのパッションをシェアするのに最適な形のようです。

参加して下さった皆さん、ありがとうございました!