July 21st, 2011

Google+から学ぶ、ウェブサービスのデザイン

Written by Chris Palmieri

人間のコミュニケーションに深く入り込むツールとは、ユーザである我々の利用を通じて成長していく。ツールの提供者は、いくつかのメッセージと共にそのツールを世に出す。そして、そのツールの位置付けやベストの使い方は、ユーザに教えてもらうのである。

いくつかの核となるコンセプトに基づき、比較的コンパクトな形でリリースされたGoogle+は、例外ではない。今後、ユーザよる諸々の近道やハックを通じて、Google社内のチームで始まったプロダクトの物語が完成されるのが楽しみだ。

さて、Google+のデザインについてGoogleがとった決断について、「新しいサービスのデザイン」という観点から、特に興味深いと思った5点を紹介する。

1. 見慣れたコトバを使う

“Google+”

Pluses everywhere.

“Google+”とは、完全に想像力の欠けたネーミングであると同時に、Google+が目指す姿にピッタリ適していると言える。というのも、Google+は、独り立ちする新しいプロダクトではない。既にGoogleが数十億人に提供しているサービスを、あくまでも拡張するソーシャル・ツール群なのである。

プラスの記号が小さすぎる!と言う人もいる。確かに、Googleのロゴの隣に座るプラスの記号には、ほとんど気づかれないかもしれない。しかし、これは20世紀のブランディングとは違う考えを取らなければいけない。地下鉄のポスターの一角を飾るものではないのだ。

記号のコンパクトさは、インターフェイスのどこにでもはめ込められることを可能とする。ウェブサイト上で見る「Google+」とは、「あなたの知っているGoogleに新たな価値が足されたもの」という意味を持つ。Googleのツールバーで見る「+Chris」とは「会話に参加する」という意味を持ち、検索結果に表示される「+1」は「自分も賛同をする」という意味合いとなる。とりわけオリジナリティがあるというわけではないが、これだけのフレキシビリティがあれば、Google+が今後どのような形になろうと、対応できるだろう。

“Circles”

とてもエレガントなネーミングだと思う。「サークル」とは一般名詞であり、オフラインの人間関係で既に定義されている。その意義や機能を理解するために、説明は要らない。名前そのままなのである。また、この一言を通じて、Googleがオンラインの人間関係をどのように捉えているのかが垣間見える。つまり、何層もの深みがあり、変わってゆく緩いつながりであり、共通の興味に基づいたもの、といったところだろうか。

Circleのインターフェイスは不恰好かもしれないが、コミュニケーションツールとしては強力なものだ。

2. インターフェイスは「操作を可能とする」だけでなく「しゃべる」

ドラッグアンドドロップのインターフェイスは、Circleのコンセプトを紹介するためには、強力なコミュニケーションツールである。小さなプロフィール写真に囲まれたこの大きな円形は、Circle機能を印象付ける役割を見事に果たす。Circleを友だちに説明する時に使うであろう、利用者のメンタルモデルを体現しているのだ。

まぁ、ユーザビリティ自体は、あまり良くない。ユーザにドラッグアンドドロップを完全に使いこなしてもらうまで、ウェブデザインそのものが進んでいないのだ。Googleは無理やりこれを成し遂げるかもしれないが、現在の形で「名刺」を操作するには、わりと不恰好な方法である。

リリース一週目にして、既にGoogle+には使いやすい管理ツールがいくつかある。ずっとこのインターフェイスを使い続けることはないだろう。しかし、このインターフェイスを通じて、Circleのコンセプトを私たちのソーシャルネットワークの共通認識として焼きつけることができれば、大成功だと言えるだろう。

3. コントラスト→フォーカス→「シンプル」

デザイナーとユーザの間には、ツールはシンプルな方が良い、という合意がある。残念なことに、実際には本当にシンプルなツールというのは発明済みであり、私たちはせいぜい「見た目がシンプル」を目指せる程度である。スプーンはシンプルである。Google+はシンプルではない。でも、フォーカスを最大化するためにデザインされているため、見た目はシンプルである。

例えばストリームは、コンテンツの見せ方に対するフォーカスを最大化するためにデザインをされていて、Google+で最もエレガントなビジュアルデザインの箇所と言えるだろう。TwitterのタイムラインやFacebookのウォールと同様に、Google+のストリームは、コンテンツを操作する複数のツールが提供されている。これらのツールは、白・薄いグレー色・細い線を施した静かなデザインとして表示される。そして、使いたいと思うと、飛び出てくる。例えばテキストフィールドは、ちょうど良い大きさと目立ち具合になり、ボタンやアイコンはクリックしやすい色に変わるのだ。

私がストリームで一番好きなデザインは、ストリーム内をクリック又はj/kキーをトグルで表示される細い垂直線だ。この一本の線は、各ブロックの高さとテキスチャーの違いを均等にし、利用者にスクロール後の位置、そしてコンテンツの始点と終点をさりげなく教えてくれる。

TwitterとFacebookも同じような段階的開示のテクニックを採用しているが、Google+が到達したビジュアルフォーカスの精度には及ばない。

4. 環境に合わせて、インターフェイスのボリューム感を調整する

Google+のスマートフォンブラウザのインターフェイスは、画面の大きさに制限されることなく、ブラウザ版の機能をほぼフルに提供すると同時に、モバイルならではの環境情報の入力を誘う。モバイルを始点にプロダクトのデザインが行われたかは不明だが、モバイルファーストの力を発揮したエクスピアリアンスであることは間違いない。

機能の充実の差異は許さない反面、エステティックの違いは大きい。ビジュアル面から見ると、スマートフォン版とPCサイト版のインターフェイスの共通点はあまりないのだ。PCのインターフェイスは、紙のエステティックからヒントを得ているように見える。スマートフォンは、iPhoneアプリのスタイルを受け継いでいる。例えば、片手と片目で操作できる3Dタッチの目立つアイコン、情報ヒエラルキーの変化を示すズームやスライド動作、クリックを誘うシャドウ・ハイライト・レイヤー効果の採用などだ。

これらのディテールを掛け合わせると、整合性のとれた3Dの美しい世界が描かれるわけではない。利用者が、雑多なリアルな世の中でインターフェイスを使うなかで、操作ミスを押さえて、自信を増強させるようにデザインされているのだ。

5. 微小な瞬間が積もれば、ロイヤリティになる

昨今のユーザは、新しいソフトウェアを試すことは投資を要すると認識している。フリーソフトであっても、時間・努力・友だちへの情報発信というのは、貴重かつ有限なリソースなのだ。競合の多いソーシャル・ネットワークの海に飛び込む、というGoogle社の決断は、巨大なサービスの乗り換えを駆り立てなければいけない、という条件を伴っていた。Instapaper開発者のMarco Arment氏が指摘したように、この乗り換えが一気に起きないには、初期ユーザたちにとってGoogle+の主な機能は役に立たないものとなるのだ。

これを可能とするために、Google社はいくつか賢いステップをとった。その中で特に大事なのは、ユーザの投資を極め細かく刻んでいったことだろう。摩擦を可能な限り排除することに徹底したインタラクションデザインを通じて、一つひとつの微小な投資に対して、即座に小さなハッピーをリターンするのだ。

このアプローチを体現している一つの例は、Circle内の友だち関係を管理するインターフェイスだ。利用者は、アドレス帳の一括インポートと編集を強要されることはない。Google+とGmailにちょこんと追加された小さなブロックを通して、一息ついた時にポチポチと友だちを一人ずつ追加していけば良いのだ。マウスを一瞬動かしてクリックをする、という小さな投資を繰り返すだけ。最高のインタラクションデザインではないか。

友だちを追加するリターンは何だろうか?クリックした時点では、実は明らかではない。その「名刺」は消えて、次の名前があらわれる。動作自体にはこれといった価値があるわけではないか、最初の何十回かは何となく楽しい。そのうち、Circleが少しずつ大きくなっていることに気づく。Gmailで受け取ったメールには、送信者のプロフィール写真が表示されるようになる。友だちと何かを共有したいと思った時、20クリックではなく2クリックで出来る。これらの微小な瞬間が積もって、何百万人のロイヤリティーにつながっていくかは、数年経たないと分からないだろう。その間に、Googleは、軌道修正を通してサービスを成長させる時間を稼ぐことができるのだ。

UXを向上させる短期間コンサルティング
UXエキスパートのアプローチについて

クリス・パルミエリグラフィックデザイン、日本語、日本の美学を勉強した後、デザインビジネスを始めるために2001年に日本に移住。
2004年にAQを共同設立。クライアントの熱意を強力なコミュニケーション・ツールへと変化させるべく、クリエイティブ・プロセスの指揮をとる。クリスの記事をもっと読む


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